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そば職人一代記 下町の地震と空襲

赤羽根 一雄・著
三一書房   出版社のホームページ
定価:2,136円
1996年10月刊
四六版 (12.7x18.8cm) 284p

東京本所区、関東大震災と東京大空襲を潜り抜けた、生粋の蕎麦職人がここにいる。

第一章 そば屋の開店
   汽車見物 そば屋の開店 関東大震災 避難民 帝都復興
   金融恐慌 隣組の歌 暗い灯の宴
第二章 椰子油の天ぷら
   椰子油の天ぷら 石狩川 雑炊 軍隊 とび粉のそば 地獄絵
   生きてまた会う 生き残った者
第三章 ヨコハマ・ママ
   ヨコハマ・ママ 開拓 釜盗人 霜柱の道 春一番
第四章 白い花の実
   煙草の葉 まずはうどん屋 検察庁 転機は春に 白い花の実
(目次より)
アメリカという国がヒロシマ・ナガシキに原子爆弾を投下し、トウキョウの街を無数の爆弾で焼き尽くして多くの民間人を虐殺した事実は、深く記憶に留めておかなければならない。
この本の著者は、東京大空襲で母親と3人の妹を殺された。
著者自身は学校のプールに身を沈めて生き延びるのだが、その間の描写はなんとも凄まじい。

そば屋に生まれた著者は、9歳の時に関東大震災に遭遇する。
父親が開店したそば屋は、開店から3ヶ月たらずで焼失する。
記憶は、昭和金融恐慌、二.ニ六事件、徴兵、東京大空襲、疎開時代をたどらい、やがて著者自身がそば屋となるまでが語られる。
時代の荒波を潜り抜け、というような月並みな言い方が憚られるような、生きて行くことが困難な日々の連続。
とはいえ、人間というものは逞しいものだなあと思う。
時代がどうあれ、なんとか生き延びようと工夫を重ね、笑いを忘れることもない。
しかも弱い立場の者に対して、思いがけず優しかったりもする。
また逆に、恐ろしいほどに酷薄であったりもする。

著者が記したことが、この時代のすべてであるとは思わない。
しかしここに記されたことには、真実がある。
時代に洗われて残った結晶という趣がある。

どこかの出版社で文庫化してくれないものだろうか?
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